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は左利きだが道具も参考書も右利きを対象としている。なにしろこのスクリーン印刷は手作業の部分が多く参考書に書いてあることはみんな左利きに考え直して道具を使っている。
スクリーン印刷はTシャツやジャンパーなどにプリントするのが主流だが、最近はシルクスクリーンと言って版画の分野で世界中の有名な作家が立派な作品を沢山発表されている。
そのおかげで一般の間でもシルクスクリーンに興味を持つ人が増えてきた。
前、ある文化教室に招かれてスクリーン印刷の講義をすることになった。
受講者は中年の人が多かったが席の前の方に20才前と見られる女性がいた。講義がまだ学生時代の続きのような感じで彼女は熱心にメモをとったり、つぶらな瞳を輝かせて私の一言一言をうなずきながら聞いていた。
し終わって今度は実技である。製版も無事終わり一人にひとつずつ版がゆき渡った。
プリントは受講者があらかじめ用意してきたハンカチに刷ることにした。
最初、わたしが手本になってやってみせた。作業台に白いハンカチを置きその上に版をのせる。片方の手で版の端を押さえもう一方の手で版の上からスキージでこする。スキージというのは柔らかいプラスチックの板である。刷り終わって版をあげればハンカチには見事にきれいな花柄がプリントされている。
れから先は受講者に順番に刷ってもらった。
トップはつぶらな瞳の少女である。彼女は最初から熱心に私の手元を見ていた。私がしたのと同じようにスキージで版をこする。スキージを押さえ過ぎるとプラスチックがたわんでインクがにじむ。軽くこすっても下のハンカチにインクが届かない。プラスチックの切り口のかどで版をなでるようにこするのが秘訣だが、そうは言ってもみんなが見ている中での作業、しかも初めての体験である。刷ったあと版をあげてみるとやはり薄いところや消えたところもあり、しかも端の方はにじんでいた。初心者なら仕方がない。できあがったハンカチをおみやげに持って帰ってもらう予定だったのでこちらで用意していたハンカチでもう一度挑戦してもらった。
度目は途中まで私が刷りそのまま彼女に代わった。スキージがふらふら傾いて版の上を移動している。これではプリントがムラになって当たり前。でも初心者だから仕方がない。スキージを運ぶ手が早くなったり遅くなったりして決まらない。これも初心者だから仕方がない。それにしてもこの人は手先が器用でないのかも知れない。版を押さえた手の先にインクがついた。ついたインクをもう一方の手で拭きにくそうに拭いている。
は自分の間違いに気がついた。
「あなた、左利き?」
と聞くと、つぶらな瞳を忙しくまばたかせて小さな声で
「いいえ」
と言った。 |
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